愛媛県今治市菊間町で行われる「菊間祭り」は毎年10月第3日曜日に開催されます。その最大の見どころは、勇壮華麗な伝統行事「お供馬の走り込み」です。
色鮮やかに飾られた馬に少年がまたがり、掛け声とともに参道を一気に駆け抜ける姿は迫力満点。国内唯一といわれるこの神事は、約600年の歴史を持ち、愛媛県無形民俗文化財にも指定されています。
菊間祭り(お供馬の走り込み)の日程

概要
開催日時:毎年10月第3日曜日に開催
場所:加茂神社
お問い合わせ先:今治市菊間支所住民サービス課
電話番号:0898-54-3450
開催日・時間
菊間祭りの最大の見どころ「お供馬の走り込み」は、2025年10月19日(日)に開催されます。
この日は毎年10月第3日曜日に行われる加茂神社の大祭にあたり、午前8時から神輿の渡御が始まり、午前11時まで境内参道を舞台に勇壮な走り込みが披露されます。
子どもたちが神馬に乗り、「ホイヤー、ホイヤー」の掛け声とともに疾走する姿は必見です。
開催場所とアクセス
会場となるのは、今治市菊間町に鎮座する加茂神社です。住所は「今治市菊間町浜1989」。
菊間駅から東へ約1kmの場所に位置しており、境内には300mにおよぶ参道が走り込みの舞台となります。神輿渡御や獅子舞、牛鬼などもあわせて披露され、神社全体が祭り一色に染まります。
お問い合わせ先
菊間祭りに関するお問い合わせは、今治市菊間支所住民サービス課が窓口となっています。電話番号は0898-54-3450です。
日程や行事の詳細、観覧に関する情報を確認したい場合は、事前に連絡しておくと安心です。伝統ある「お供馬の走り込み」を存分に楽しむために、ぜひご活用ください。
菊間祭り(お供馬の走り込み)とは

室町時代から続く600年の伝統
「お供馬の走り込み」は、室町時代に京都・上賀茂神社の葵祭に倣って始まったと伝えられる行事です。約600年にわたり今治市菊間町で続けられており、華やかに飾られた馬と少年騎手が参道を疾走する姿は圧巻です。
地域の人々に大切に守り継がれ、今日まで受け継がれてきた伝統行事は、全国的にも珍しい存在です。
愛媛県無形民俗文化財に指定された理由
お供馬の走り込みは、3歳から15歳までの少年が騎手となり、装飾を施した神馬とともに参道約300mを一気に駆け抜ける勇壮な行事です。
国内でも類例がなく、祭礼の特色を色濃く残す貴重な文化として昭和40年に愛媛県無形民俗文化財に指定されました。家内安全や五穀豊穣を祈願する神事としての意義も高く評価されています。
加茂神社とお供馬の関係
菊間町の加茂神社は、賀茂別雷命をはじめとする四柱を祀る古社で、地域一帯の氏神として信仰を集めています。お供馬の走り込みは、この加茂神社の秋季大祭「菊間祭り」で執り行われる中心行事です。
神馬と少年騎手が参道を駆け抜け、神輿渡御に供奉することから「お供馬」と呼ばれるようになり、神事と祭礼を結びつける重要な役割を担っています。
お供馬の走り込みの見どころ
少年騎手と神馬の疾走
お供馬の走り込みでは、3歳から15歳までの少年が「乗子」となり、祭用の鞍や装飾具で華やかに飾られた神馬に乗ります。
少年と馬は一体となり、加茂神社の参道を駆け抜ける姿は圧巻で、観客を魅了します。特に経験を積んだ少年は、両手を離して走る離れ業も披露し、その勇壮華麗な姿は国内でも珍しい光景です。
勇ましい掛け声「ホイヤー、ホイヤー」
走り込みの際、少年たちは「ホイヤー、ホイヤー」と勇ましい掛け声を上げます。このかけ声は祭りの活気を高めるだけでなく、馬と騎手の呼吸を合わせる役割も果たしています。
掛け声と共に駆け抜ける神馬の姿は、観客に臨場感と一体感をもたらし、祭りの勇壮さを際立たせています。
参道300mを一気に駆け抜ける迫力
お供馬の走り込みは、加茂神社の参道約300メートルを一気に駆け抜けます。急坂を含むこのコースを神馬が疾走する姿は、迫力満点で観客の歓声が沸き上がります。
人馬一体となった疾走の様子は、国内の祭りでも珍しい光景であり、勇壮華麗な伝統行事の魅力を存分に感じられます。
神輿渡御とのつながり
走り込みの神馬と少年騎手は、神輿渡御にも供奉します。午前8時に始まる神輿渡御から11時まで、神馬は神輿に付き従い御旅所まで進みます。
この役割から「お供馬」と呼ばれ、単なる見世物ではなく、祭りの神事として欠かせない存在となっています。神輿との連動が祭り全体の一体感を生み出しています。
祭りを彩るその他の伝統行事
獅子舞と継ぎ獅子
菊間祭りでは、池原地区に伝わる獅子舞が神賑わいとして披露されます。江戸中期には獅子組と牛鬼組が宮出しの際に争った記録もあり、長い歴史を感じさせます。
菊間の獅子舞は野間流に属し、口上や継獅子、子狐の演技など、細やかな振り付けと呼吸が重要です。一ヶ月前からの激しい練習を経て、祭礼当日には勇壮で華麗な舞が境内を彩ります。天下泰平や五穀豊穣を祈る意味も込められています。
牛鬼の練り歩き
菊間祭りでは、疫病退散を願い牛鬼が町内を練り歩きます。竹で胴を作り布で覆い、その中に人が入って担ぐ形で、長さは約8m、首は伸縮自在です。牛鬼は走行中は首を縮め、迫力ある動きを見せます。
宇和島地方の鬼面獣身とは異なり、菊間の牛鬼は文字通り牛の顔を持ち、独自の姿を誇ります。疫神退散の伝承に基づき、途絶えることなく祭礼で活躍し、祭りの賑わいに欠かせない存在です。
神輿の巡行と顔見世
祭礼前日早朝には、末社の八幡神社・厳島神社・砥鹿神社の神輿が宮出しされ、町内を巡行します。昔の芝居興行の宣伝のように各神輿や太鼓台、牛鬼、山車などが町内を練り歩き、神輿渡御の祝儀を受ける行事を顔見世と呼びます。
当日は本社神輿をはじめ各地区子供神輿も供奉し、加茂神社境内での神賑わいに参加。勇壮な行列が境内を彩り、祭りの雰囲気を一層盛り上げます。
地域に受け継がれる想い
少年騎手と家族の祈り
お供馬の走り込みで馬に乗る少年騎手たちは、3歳から15歳までの子どもたちです。祭り当日、家族は少年の体にお守りを取り付け、頭に巻いた黄色い鉢巻きにも祈りを込めます。
勇壮な掛け声とともに参道を駆け抜ける姿には、家族の願いや地域の思いが込められ、伝統を次世代へとつなぐ大切な時間となっています。親から子へ、地域全体で守り続ける宝物のような文化です。
海での禊と参篭の習わし
祭礼の一週間前から、騎手や口引きの大人たちは毎日海で禊を行い、心身を清めます。厩舎も注連縄と塩水で清め、祭りに向けて神聖な準備を進めます。
この習わしは祭り当日まで続き、少年騎手が安心して神馬に乗れるよう支える地域の知恵と信仰の象徴です。長年受け継がれたこの習慣が、祭りの神聖さと勇壮さを支えています。
引退競走馬と地域の共生
お供馬として走る神馬は、かつて競走馬として活躍していたサラブレッドです。引退後も地域の祭りで活躍することで、馬のセカンドキャリアを支えています。
1975年に結成された愛馬会をはじめ、地域の人々が協力して神馬を守り続けることで、伝統文化と動物福祉が共存する仕組みが生まれました。馬と人が共に築く歴史の絆が、菊間祭りの魅力をさらに深めています。
まとめ
菊間祭りの「お供馬の走り込み」は、約600年の歴史を持つ国内でも珍しい伝統行事です。加茂神社の境内参道約300メートルを、華やかに飾られた神馬に少年騎手が乗り、「ホイヤー、ホイヤー」の掛け声とともに疾走します。その勇壮で華麗な姿は、観客の目を釘付けにし、迫力ある神事として愛媛県無形民俗文化財に指定されています。
祭りではお供馬のほか、獅子舞や継ぎ獅子、神輿、牛鬼なども登場し、町全体が賑わいに包まれます。少年騎手たちは祭礼前から海で禊を行い、家族から授けられたお守りを身に付けて臨みます。この行事は、地域の伝統文化を守りながら、引退競走馬のセカンドキャリア支援にもつながっており、人と馬の共生を体現する祭りです。
毎年10月第3日曜日に開催される菊間祭りは、地域の人々の想いと歴史が織り込まれた神聖かつ勇壮な祭礼です。参道を駆け抜ける少年騎手と神馬の姿は、観る者に感動と興奮を届け、地域文化の魅力を存分に体感できる機会となります。国内唯一のこの伝統行事は、家族や観光客にとっても一生の思い出となるでしょう。