愛媛県宇和島市吉田町で毎年11月3日に行われる「吉田秋祭」。
350年以上の歴史を誇り、牛鬼や鹿踊り、豪華絢爛な練車など、南予地方ならではの伝統芸能が一堂に会する迫力満点の祭礼です。江戸時代から続く町並みを舞台に繰り広げられるおねり行列は、まさに絵巻物の世界そのもの。
今年の開催日程や見どころを詳しくご紹介します。
吉田秋祭の日程と概要

概要
開催日時:毎年11月3日
場所:吉田伊達広場(吉田支所前)
お問い合わせ先:宇和島市観光物産協会事務所
電話番号:0895-49-5700
開催日と開催場所
吉田秋祭は、愛媛県宇和島市吉田町立間にある「南山八幡神社」の秋季例大祭として、毎年11月3日に開催されます。
1664年に始まったと伝わる歴史ある神幸行事で、350年以上もの伝統を誇ります。豪華な練車や勇壮な牛鬼、典雅な鹿の子踊りなど、南予地方独特の祭礼が一堂に会する姿は圧巻。
吉田の町割りは江戸時代と変わらず残されており、町全体がまるで祭礼絵巻の舞台そのもののように華やぎます。
一日の流れ(スケジュール)
吉田秋祭は早朝から夜まで盛大に行われます。
午前5時には「卯之刻相撲」が奉納され、午前8時30分頃には八幡神社から神輿が宮出しされます。午前11時には華やかなおねり行列が始まり、正午から午後1時には吉田支所前で練車などの展示が行われます。
その後も行列は続き、午後2時30分頃に桜橋で餅まきが行われ、午後6時頃には再び神輿が八幡神社へ宮入し、祭りは最高潮を迎えます。
卯之刻相撲(八幡神社※立間) | 5:00 |
神輿の宮出し(八幡神社※立間) | 8:30 |
おねり出発(本丁通り周辺) | 11:00 |
練車などの展示(吉田支所前) | 12:00~13:00 |
おねり再開 | 13:10 |
おねり紹介(桜橋前) | 13:20 |
餅まき | 14:30 |
おねり解散 | 15:30 |
御旅所神事(住吉神社) | 16:00 |
宮入(八幡神社※立間) | 18:00 |
吉田秋祭とは?

350年以上続く伝統行事
愛媛県宇和島市吉田町で毎年11月3日に行われる「吉田秋祭」は、南山八幡神社の神幸祭として1664年に始まったと伝わる伝統行事です。
幕末期に描かれた絵巻物にもその様子が残されており、江戸時代から変わらぬ町割りの中で350年以上にわたり受け継がれてきました。
卯之刻相撲、伊勢踊り、鹿の子、練車、牛鬼など、多彩な行事やねり物が登場し、豪華絢爛な祭礼絵巻を思わせる華やかな雰囲気が特徴です。
南予地方を代表する祭礼の魅力
吉田秋祭の最大の魅力は、南予地方独特の多彩な「ねり」が一堂に会する点にあります。
勇壮な「牛鬼」、優雅な「鹿踊り(鹿の子)」、歴史的な人物を飾る「練車」や「御船」、そして地域住民が参加する御用練りや宝多など、多様な練り物が町を練り歩きます。特に「吉田の暴れ牛鬼」は他地域では見られない迫力で知られ、観客を圧倒します。
華やかさと迫力が共存する吉田秋祭は、南予の祭り文化を凝縮した存在として、今なお地域の誇りとして受け継がれています。
吉田秋祭の行事と見どころ
卯之刻相撲 ― 勝敗を持ち越す神事相撲
吉田秋祭の早朝を告げる「卯之刻相撲」は、午前5時から八幡神社で行われる特別な奉納相撲です。
行司と力士は紋服に袴という厳粛な正装で登場し、三番の取組を披露します。最後の大関同士の勝負では行司が割って入り、「勝敗は決せず来年へ持ち越す」と宣言するのが慣例。
神々の力比べは決着をつけないことで永遠に続くとされ、350年以上受け継がれてきた神事ならではの独特の趣があります。
鹿の子(鹿踊り) ― 七ツ鹿が舞う伝統芸能
吉田の「鹿の子」は、南予地方に伝わる珍しい鹿踊りで、七頭の鹿が登場するのが特徴です。
雄鹿二頭、雌鹿一頭、若鹿二頭、子鹿二頭による構成で、親鹿の吹く笛の音に合わせて胸にかけた太鼓を打ち鳴らしながら舞います。雄鹿が雌鹿を奪い合う場面や子鹿を交えた庭見など、哀調と力強さを兼ね備えた舞は圧巻。
仙台伊達家の文化を背景に伝わったとされ、吉田ならではの優雅さと迫力を楽しむことができます。
牛鬼 ― 「吉田の暴れ牛鬼」と称される大迫力の練り
「吉田の暴れ牛鬼」と呼ばれる牛鬼は、祭りの最大の見どころの一つです。
巨大な牛鬼が町を練り歩き、各家に首を突っ込んで悪魔払いをする勇壮な姿は迫力満点。特に御殿前や桜橋などの地点では、暴れ狂うように舞い、家屋を守るため柵を組むほどの激しさで知られています。
宇和島地方に広く見られる牛鬼の中でも、吉田の牛鬼はとりわけ荒々しく、観る者を圧倒します。その豪快なパフォーマンスは必見です。
練車(おねり行列) ― 豪華絢爛な人形屋台
「練車(ねりぐるま)」は、豪華な人形や立体刺繍の幕で飾られた二階建ての人形屋台で、吉田秋祭を象徴する存在です。
幕末の絵巻にも描かれるおねり行列では、関羽や七福神、歴史的な武将などが人形として登場し、町を優雅に練り歩きます。町割りが江戸時代からほとんど変わらぬ吉田の街並みの中で繰り広げられる光景は、まさに祭礼絵巻そのもの。
町人たちの財力と美意識を伝える華やかな練車は見逃せません。
御用練り・御船・宝多 ― 多彩なねり物が織りなす祭礼絵巻
吉田秋祭には、練車以外にも多様なねり物が登場します。
先頭を歩く侍集団「御用練り」、勇壮な海の象徴「御船」、そして夜を練り歩く「宝多」など、趣の異なる練り物が一堂に会します。これらは町ごとに保存会によって受け継がれ、江戸時代からの伝統が色濃く残ります。
武将や神仏の人形、子どもから大人まで参加する練りは、地域の信仰や願いを映し出すもの。多彩な練り物が織り成す行列は壮大な祭礼絵巻です。
伊勢踊り ― 古式ゆかしい奉納の舞
伊勢踊りは、例祭神事の後に奉納される古式ゆかしい舞で、伊勢踊り保存会の十三人によって演じられます。
拝殿中央の太鼓演奏者を囲み、踊り手たちが御幣と歌詞を手に唄いながら舞う姿は、厳かな雰囲気に包まれています。足を交互に踏み出し調子を取る素朴ながら力強い舞は、神前に敬意を捧げるもの。
踊りの後には御神酒と御札が参列者に授けられ、神事の締めくくりを飾ります。伝統が息づく優美な奉納舞です。
吉田秋祭の注目ポイント
幕末期の絵巻に描かれた姿が今も残る町並み
吉田秋祭の大きな魅力は、幕末期に描かれた絵巻の姿が現代にも色濃く残る町並みにあります。
江戸時代から変わらない町割りの中で繰り広げられるおねり行列は、まさに時代を超えた祭礼絵巻そのもの。
古き良き町の景観と祭りが融合し、訪れる人々に歴史の息吹を感じさせてくれます。
江戸時代から受け継がれる豪華な練車と刺繍幕
おねりの中でも特に目を引くのが、精巧に作られた練車と立体刺繍の飾り幕です。
江戸時代の財力を映し出すような贅沢な意匠は、吉田町人の誇りを今に伝えています。静かに進む練車は荘厳で優雅、動的な牛鬼や神輿との対比も祭りの見どころ。
華やかさと力強さを併せ持つ独特の祭礼美を体感できます。
宵宮宝多の復活 ― 地域に息づく文化の継承
一度途絶えた「宵宮宝多」は、平成27年に復活し、再び吉田秋祭を彩る存在となりました。
白装束に宝多面をつけた人々が町を練り歩き、家内安全や商売繁盛を祈願する姿は地域の絆を感じさせます。
失われかけた伝統が地域の努力で甦り、次世代へと受け継がれていく様子は、文化財としての価値をさらに高めています。
吉田秋祭を楽しむために
アクセス方法とおすすめ観覧スポット
吉田秋祭は愛媛県宇和島市吉田町の南山八幡神社を中心に行われます。
JR予讃線「卯之町駅」や「宇和島駅」からバスでのアクセスが便利です。
祭りの見どころは、本町通り周辺で繰り広げられる豪華なおねり行列。牛鬼の勇壮な舞いや、練車の華麗な刺繍幕が間近で楽しめます。特に桜橋付近は餅まきもあり、観覧スポットとして人気です。
祭りを体感するための過ごし方
早朝の「卯之刻相撲」から始まり、昼にはおねり行列、夕刻には御旅所神事や宮入と、一日を通じて多彩な催しが楽しめます。
午前中は神社周辺で神事や練り物をじっくり鑑賞し、昼は本町通りでおねりの華やかさを堪能。
午後の餅まきは地元ならではの醍醐味です。
夕方には勇壮な牛鬼の暴れ練りを間近で感じ、祭りの熱気を一日中体感するのがおすすめです。
注意点と地域住民への配慮
吉田秋祭は地域住民と神社を中心に守り継がれてきた伝統行事です。
観覧時は行列の進行を妨げないようにし、写真撮影も周囲に配慮しましょう。牛鬼の練り歩きは迫力があり、近づきすぎると危険なので注意が必要です。
また、町並みの家々や店舗を通過する際には静かに観覧し、ゴミは必ず持ち帰ること。地域の人々への敬意を忘れず、共に祭りを楽しむ心構えが大切です。
まとめ
吉田秋祭でしか味わえない南予の文化体験
吉田秋祭は、350年以上の歴史を誇る宇和島市吉田町の伝統行事であり、南予地方ならではの独特な祭礼文化を体感できる貴重な機会です。
豪華絢爛な練車や迫力ある牛鬼、仙台伊達家ゆかりの鹿踊り「鹿の子」など、多彩な練り物が町を彩ります。江戸時代から変わらぬ町割りを舞台に繰り広げられるおねり行列は、まさに歴史絵巻そのもの。
吉田の人々が脈々と受け継いできた信仰と芸能に触れ、南予の文化の奥深さを堪能できる特別な祭りです。