毎年10月29日に行われる「宇和津彦神社秋祭り」は、南予地方を代表する伝統行事であり、勇壮な牛鬼や珍しい八ツ鹿踊りが町を練り歩くことで知られています。
1200年以上の歴史を誇る由緒ある宇和津彦神社で繰り広げられる祭りは、地域の人々にとって氏神様への感謝を表す大切な場であり、訪れる人々にも迫力ある伝統芸能の魅力を体感させてくれます。
本記事では、その日程や見どころについてご紹介します。
宇和津彦神社秋祭りの日程と概要

概要
開催日時:毎年10月29日
場所:宇和島市野川新13(宇和津彦神社)
お問い合わせ先:宇和島市観光情報センター
電話番号:0895-49-5700
10月28日:宵宮祭と神事
宇和津彦神社秋祭りは、毎年10月28日の宵宮祭から始まります。
この日は神社にて厳かな神事が執り行われ、祭りの安全と地域の繁栄を祈願します。地元の人々にとって宵宮祭は、翌日の本祭へと気持ちを高める大切な儀式であり、祭礼全体の序章を飾る日です。
参拝者も境内に漂う神聖な雰囲気を味わうことができ、普段は静かな神社が特別な緊張感と期待感に包まれます。地域の伝統と信仰を深く感じられるのが宵宮祭の魅力です。
10月29日:本祭(神輿渡御・練り物行列)
翌日の10月29日には、宇和津彦神社秋祭りの本祭が盛大に行われます。
神輿渡御では、氏子たちが神輿を担ぎ、牛鬼をはじめとする勇壮な練り物が町を練り歩きます。特に、西日本では珍しい八ツ鹿踊りや獅子舞、猿田彦などが加わり、色彩豊かで迫力ある行列が繰り広げられます。
観客は間近で伝統芸能を楽しみ、地域の歴史と文化の奥深さに触れることができます。南予を代表する祭礼として、多くの人々を魅了する一日です。
宇和津彦神社秋祭りとは?

歴史と由緒
宇和津彦神社の秋祭りは、毎年10月29日に行われる南予地方を代表する伝統行事です。
祭りの起源は江戸時代初期、慶安2年(1649年)にまでさかのぼり、当時の町人たちが趣向を凝らした練り物を出した記録が残っています。
さらに神社自体の歴史は1200年以上と古く、第12代景行天皇の御子である國乳別皇子を祀り、南予の開拓を担った神を奉じています。
地域の氏神として厚く信仰され、今も変わらず家内安全や厄除けを願う多くの人々に親しまれています。
南予一宮としての役割
宇和津彦神社は南予一宮とも称され、地域を代表する格式の高い神社です。
かつては領主や藩主の氏神として崇められ、宇和島藩の総鎮守と位置付けられていました。秋祭りはその象徴的な行事であり、牛鬼や八ツ鹿踊りといった独特の芸能が奉納されます。
これらは単なる娯楽ではなく、神への感謝や地域の安寧を祈る儀礼として大切に守られてきました。今日でも地元の人々にとって、宇和津彦神社は精神的な拠り所であり、地域の誇りそのものです。
伊達家との深い関わり
宇和津彦神社は、初代宇和島藩主・伊達秀宗が入部した際に一の宮と定められ、伊達家との深い関わりを持ちます。
伊達家は仙台から移り住んだため、郷愁を込めて伝えた八ツ鹿踊りが祭礼に取り入れられました。この踊りは今も受け継がれ、西日本では極めて珍しい存在となっています。
また、藩主が厚く崇敬したことで神社は藩の象徴的存在となり、祭礼は城下町全体を盛り上げる一大行事へと発展しました。
その伝統は現代に息づき、歴史的文化財として大切に継承されています。
見どころ1:勇壮な牛鬼
南予独特の文化「牛鬼」とは?
牛鬼は、南予地方に独自に伝わる伝統的な祭礼行列の象徴で、全国的には類例がほとんどありません。頭部が牛の形をしており、大きな体躯と迫力ある姿が特徴です。
宇和津彦神社の秋祭りでは、神輿の先導役として氏子地域を練り歩き、神様のお供としての役割を果たします。
江戸時代から続くこの文化は、宇和島藩を中心に南予各地に広がり、現在では約150ヶ所で伝承されており、地域の誇りとして守られています。
神輿渡御を先導する迫力の姿
祭り当日、牛鬼は神輿が町内を巡行する前に登場し、露払い・先払いとして神輿を先導します。大きな体を揺らしながら練り歩く姿は、迫力満点で観客を圧倒します。
その動きに合わせて太鼓や笛の音が響き、祭りの雰囲気を一層盛り上げます。地域住民が代々受け継いできた牛鬼は、単なる見世物ではなく、神への敬意と地域の結束を象徴する存在として、祭りのハイライトを彩ります。
見どころ2:八ツ鹿踊り
西日本では珍しい伝統芸能
八ツ鹿踊りは、鹿の面を頭にかぶり、その面から垂れる布で上半身を覆い、太鼓を抱えて歌いながら踊る南予地方独特の伝統芸能です。
西日本では福井県小浜地方と愛媛県南予地方周辺でしか見られず、宇和津彦神社秋祭りでの奉納は特に有名です。
江戸時代初期に仙台から宇和島藩へ伝わったとされ、歴史的背景も深く、地域の人々に長く受け継がれてきました。祭りの華やかな雰囲気と相まって、訪れる人々に強い印象を残します。
仙台から伝わった舞と歌の魅力
八ツ鹿踊りの歌やリズムは、仙台周辺の鹿踊りと共通点が多く、回転する動きや太鼓の打ち方、歌詞の節回しにその影響が見られます。
「回れ回れ水車、遅く回りて、堰に止まるな」といった歌詞は地域の人々にも親しまれており、観るだけでなく聴く楽しさもあります。
江戸時代から続くこの舞は、神様への奉納として行われ、地域文化の豊かさを象徴する存在となっています。
見どころ3:多彩な練り物と芸能
獅子舞・猿田彦・巫女の舞
宇和津彦神社秋祭りでは、牛鬼や八ツ鹿踊りだけでなく、獅子舞や猿田彦、巫女の舞といった多彩な伝統芸能も披露されます。
獅子舞は悪霊を払い、地域の安全や繁栄を祈る勇壮な演目で、神輿の渡御に合わせて町中を練り歩きます。
猿田彦の舞は道案内の神として神輿の先導を務め、独特の衣装と動きで祭りを華やかに彩ります。
巫女の舞は神聖な雰囲気を演出し、観客に神聖さと優雅さを感じさせます。
地域住民が守り継ぐ伝統芸能
これらの練り物や舞は、単なる見世物ではなく、地域住民の手によって長年受け継がれてきた文化財です。
町内の保存会や氏子組織が中心となり、毎年秋祭りの準備や練習を重ねることで、伝統の技や型が守られています。
祭りを訪れる人々は、地域の人々が誇りを持って守り続ける伝統芸能を間近で体験でき、単なる観光以上の深い文化的価値を感じることができます。
まとめ
1200年の歴史を体感できる秋祭り
宇和津彦神社秋祭りは、1200年以上の歴史を持つ由緒ある神社で行われる伝統行事です。第12代景行天皇の御子・國乳別皇子を祀る神社として、代々領主や地域住民に崇敬されてきました。
祭りでは神輿渡御や練り物行列が繰り広げられ、古来からの信仰と文化を今に伝えています。
特に南予地域に根付く牛鬼や八ツ鹿踊りは、歴史の重みと地域の誇りを感じさせ、訪れる人々に古き伝統の息吹を体感させてくれます。
地域に根付いた伝統芸能に触れる旅
秋祭りでは、八ツ鹿踊りや牛鬼、獅子舞、猿田彦、巫女の舞など、地域独自の練り物や芸能が披露されます。
これらの演目は、江戸時代から現代まで地域住民によって受け継がれ、祭りの活気と地域のつながりを象徴しています。観光客もその迫力ある演舞や太鼓の音に引き込まれ、南予の文化や風土を肌で感じることができます。
祭りを訪れることで、地域の伝統を五感で体験できる貴重な旅となります。